さよならさよなら白いともだち | おしりをつつく、ほっぺをつつく。

さよならさよなら白いともだち

 

 キッチンから

 リビングで遊んでいる子供たちに『ちょっとおいで』と声をかけて

 

 「面白いもんあるで?」


 床に置いたのは、水をはったボウルに入れたドライアイス。


 スーパーで冷凍食品なんかを買ったときに、機械からゴオォーっと出すような、

 そんな規模じゃなく、姉から届いた年末(お歳暮?)ギフトのアイスクリームに入っていた

 こんにゃく2枚分くらいのでっかいやつ!


 もくもくと湧き出る?しろい蒸気を 『もや』 と名づけて

 寝転んで横から見たり

 思い切り蒸気を吹き飛ばしてみたり

 まわりの水が凍ってパワーダウンしたところを

 『もや』パワー全開にして!とお湯をかけることを3回くらいせがんだり

大興奮でしばらく楽しんだ息子たちでしたが


 そいつがムシキングカードくらいの大きさになってから、どうも、様子がおかしく……


 「おにいちゃん、(蒸気を)ふーってせんとってー

  『もや』がなくなるやんか!」

 「ふーってしたから小さくなるわけじゃないんやで!」


 「ちっちゃくなったらかわいそうやんか!」


 どうやら次男はドライアイスそのものも含めて『もや』と呼んでいて

 その『もや』がどんどんちいさくなって

 そのうち消えてしまうことに、ようやく気付いたようでした。


 そうしているうちにも『もや』は100円ライターくらいの大きさになり

 消しゴムくらいの大きさになり……


 「あ、もうちっちゃいマルになったわ。」

 

 

 そして。



 「も~~~や~~~~~~~あぁぁぁ!!」



 大泣きの次男。

 


 「悲しい気持ちは僕にもわかるで」


 そう言って次男の肩に手を置いた長男は

 唇を噛んで、リビングに走りました。





 『もや』遊んでくれて、ありがとう。




 息子よ、気付いていたかい?

 『もや』パワーを全開にすることは

 同時に彼の命を縮めてしまうことだったんだよ。


 またなにかの荷物にくっついてきたらいいね。


 きっと、また、会えるよ。





 生協の注文用カタログの1番後ろに

 400グラム60円で売られているドライアイスのこと


 内緒にしておこうと思っています。


 次男があまりにも泣くもんだから

 「じゃあサンタさんにクリスマスプレゼントは

  おもちゃじゃなくて『もや』にして貰えるように頼んでみよっか?」

 と訊いたところ、返事はきませんでした。